自己破産すると、戸籍に記録が残る?
これも、根も葉もないとまでは言えませんが、どこからか捻じ曲げられた解釈と言えます。
混乱を防ぐためにまず、「戸籍」とは何かを見てきたいと思います。
戸籍とは、その人の氏名や出生(いつ、誰から生まれたか)あるいは死亡、婚姻関係、養子縁組、国籍(の離脱など)を明らかにするための制度といってよいでしょう。
つまり、その人が生まれてから死ぬまでの履歴(といっても職歴や犯罪歴は載らない)が記録されているものと言ったらわかりやすいでしょうか。では、何のためにあるのかというと、元々はお上が国民を管理するためにはじめたものですが、現状は遺産相続の時に相続人をはっきりさせるために利用されるケースが多いのではないでしょうか。
これとは別に、住民票というものがあります。これは、携帯電話を契約するときに求められたりもするので、利用することも多いと思いますが、その土地に居住していることを証明するものです。
住民票は基本的に住んでいる市町村に登録するものですが、戸籍(本籍)はどこに置いても構いません。「私は足立区で生まれたから、足立区に本籍をおかなければいけない」ということはありません。
余談ですが、本籍はどこにおいても構わないので、皇居を本籍としている人もかなりの数あります。ディズニーランドを本籍上の住所にしている人もいるようです。
ただ、戸籍謄本が必要になったときにそこの住所を管轄する役所へ取りにいかなければいけません。なので、札幌に住む人が、本籍を皇居にしても全然問題はありません。(何かの時、面倒ですが)
ということで、戸籍と住民票の違いはだいたいわかったと思いますので、本題へ入ります。
自己破産をした時に記載されるのは、先に上げた「戸籍」ではなく、「破産者名簿」というものに載ります。破産者名簿は、本籍地の市区町村が管理します。
これは、何のための名簿かというと、自己破産をした時に(一時的に)就けない仕事や資格などがありますが、たとえば、資格を申請するときに破産者ではないか確認するために利用されるものです。
もちろん、一般的に公開されることはありませんし、誰でも閲覧を申請できるものでもありません。
この破産者名簿に記載されるのは、破産の申請をしてから免責許可がおりるまでの数ヶ月の間だけです。
「戸籍に破産した履歴が載る」というのは、この破産者名簿と混同してしまった都市伝説です。
破産者名簿に載るのは過去の話
さらに、平成17年に施行された「新破産法」の影響で、必ずしも破産した人が全員破産者名簿に載るわけでは、なくなったようです。
下記の通達(難しい言葉なので読まなくても良いです)のように自己破産の手続きをしたはいいけど、免責の許可がおりなかったり、途中でやめたりした場合のみ破産者名簿へ登録する方向になっているようです。
- 破産手続開始の決定が確定した日以後1月を経過した時点において,当該破産手続にかかる免責手続が係属していないとき。
- 破産手続開始の決定が確定した日以後1月を経過した後に,当該破産手続に係る免責許可の申立てがすべて取り下げられたとき。
- 破産手続開始の決定が確定した日以後1月を経過した後に,当該破産手続に係る免責許可の申立てのすべてについて,これを却下し,又は棄却する裁判が確定したとき。
- 破産者について,免責不許可の決定が確定したとき。
- 破産者について,免責取消しの決定が確定したとき。
平成16年11月30日民三113号最高裁民事局長通達 より一部抜粋
というわけで、自己破産しても、もちろん戸籍には載らないし、今はほとんどの人が破産者名簿にも載らないというのが、正解です。
もし、誰かがしたり顔で破産者名簿のことを言ってきたら、論破してやりましょう。