飲み屋のツケは、1年で時効?
※このページ情報は若干古くなっています。2020年4月に施行される民法改正(債権法改正)で時効の期間が変更されます。
このコーナーは「債務整理にまつわる都市伝説」ということで、いわゆる眉唾な話や根拠もないことをメインに取り上げていますが、この飲み屋のツケに関しては、都市伝説ではなく「ホントの話」です。
借金に悩まされてきた皆さん(?)にとっては、「時効は5年」(あるいは10年)というのが、なんとなく頭の隅にあるかと思いますが、消滅時効には、短期消滅時効という種類に分類されるものがあって、それも意外と細かく設定されています。
短期消滅時効は、お金の請求のような債権だけではなく、業務上の責任や請求権など、何らかの権利や義務も含まれます。
ここでは、債権だけに絞って列挙しておきますが、ざっとあげてみただけでも、こんなに細かく分かれているのが分かります。
5年の短期消滅時効
- 商行為によって生じた債権
- 労働者の退職手当
3年の短期消滅時効
- 医師や薬剤師など、医療や調剤に関する債権
- 工事に関する債権
2年の短期消滅時効
- 弁護士、弁護士法人又は公証人の職務に関する債権
- 生産者、卸売商人または小売商人が売却した産物または商品の代価に係る債権
- 教育を行う者が生徒の教育、衣食または寄宿の代価について有する債権
1年の短期消滅時効
- 運送費
- 旅館、料理店、飲食店などの宿泊料や飲食料
- 日雇いなど、1ヶ月以下の短期の使用人の給料
- 自己の労力の提供または演芸を業とする者の報酬など
で、1年のところを見てみると、ありましたね。「旅館、料理店、飲食店」とあるので、飲み屋さんもここに含まれます。
ということで、飲み屋をやっている方にとっては、残念ながらツケを1年以上ほうっておくと、請求できなくなってしまうというのは、本当でした。
逆にツケを貯めている人には、ラッキーな事実でしょうね。
ただし、最近はこの細かく設定されている消滅時効を原則5年で統一しようという動きもありますので、近い将来には、変わるかもしれません。
また、時効には「停止」と「中断」があって、飲み屋の主が客に「払ってくれ」と言ったら、時効の停止となります。時効の停止は、一時的にストップさせる効果しかなく、その後、6ヶ月以内に裁判をするなどの手続きを取らないといけません。
時効の中断は「承認」といって、客がツケがあるという事実を認めた場合などがこれに当たります。たとえば、払ってくれと言ったら「今度払う。」などと客が言えば、ツケを承認したことになって、時効の中断になります。
いちおう、口約束でも時効の中断にはなるようですが、間違いなく「言った」「言わない」になるので、念書を取るなり、何らかの証拠を残す必要はありそうですね。